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令和の「ミドルエイジ(男女50~69歳)」ラジオリスナーの実態調査~ラジオ回帰傾向と広告効果~ 


音声メディアが昨今注目を浴びています。特に若者世代では、スマホの普及やコロナ禍による音声接触、様々な音声プラットフォームの登場により、ラジオを始めとして音声メディアが盛り上がりを見せています。

若者を中心とした「音声メディア復権」が様々なメディアで取り上げられる中、比較的上の世代のラジオ番組聴取実態についてはあまりフォーカスされなかったように思います。

そこで今回は、50代~60代のミドルエイジにフォーカスし、ラジオ聴取実態やリスナーの特性、さらにはラジオ広告の効果について、ビデオリサーチのマーケティングデータベース「ACR/ex」で分析してみました。

※「ミドルエイジ」の年齢定義には諸説ありますが、本稿では50~69歳をミドルエイジと表現しています。

目次[非表示]

  1. 1.ミドルエイジのラジオ聴取に新たな兆しが!?
    1. 1.1.ミドルエイジは、”ラジオ聴取のメイン”
    2. 1.2.ミドルエイジリスナーはデジタルデバイスでの聴取が増加中?
  2. 2.ミドルエイジリスナーの特徴を探る
    1. 2.1.ミドルエイジリスナーは、消費や情報収集に積極的!
  3. 3.ミドルエイジリスナーの”ラジオ回帰”と広告効果
    1. 3.1.ミドルエイジはコロナ禍を経てラジオ番組の良さを再認識している!? 
    2. 3.2.ミドルエイジリスナーへのラジオ広告効果 ―”熱量”の高いラジオリスナーに対する広告効果が高い!?―
  4. 4.最後に

ミドルエイジのラジオ聴取に新たな兆しが!?

ミドルエイジは、”ラジオ聴取のメイン”

 そもそもラジオを聴く人はどの年代が多いのでしょうか。【図1】はラジオを週1回以上聴取している人の年代構成比を示したグラフです。

「ACR/ex」個人全体(調査対象者男女12~69歳全体)の年代構成比と比べると、男性、女性ともに50代、60代のリスナーが多いことがわかります。

※ラジオ=アナログ・デジタルすべて含めた「ラジオ番組」

【図1】ラジオ週1回以上聴取者の年代構成比

出典:ACR/ex 東京50km圏(2023年4-6月調査)

では、週1回以上ラジオを聴く人はどのくらいいるのかを確認してみましょう。【図2】を見ると、個人全体に占めるリスナーは26.9%であるのに対し、ミドルエイジは38.3%。全体では4人に1人、ミドルエイジでは約4割がラジオを週1回以上聴いていることがわかります。

【図2】ラジオ週1回以上聴取者の割合


出典:ACR/ex 東京50km圏(2023年4-6月調査)

ミドルエイジリスナーはデジタルデバイスでの聴取が増加中?

*以降は、ミドルエイジのラジオ週1回以上聴取者を”ミドルエイジリスナー”と表記します。

 ボリュームの多いミドルエイジリスナーですが、何のデバイスでラジオを聞いているでしょうか。【図3】ミドルエイジリスナーのラジオ聴取可能デバイスの所有率推移を確認します。

「ラジカセ・ステレオ・システムコンポ」は19年から23年にかけて低下傾向にあり、23年は41.6%です。一方、「PC」や「スマートフォン」は増加傾向であり、特に「スマートフォン」は22年に「ラジカセ・ステレオ・システムコンポ」を上回りました。

最新調査の23年では52.5%と、ミドルエイジリスナーのうち半数以上がスマートフォンでラジオを聴ける環境であることがわかりました。


【図3】ミドルエイジリスナーのラジオ聴取デバイスの所有率(世帯)

出典:ACR/ex 東京50km圏(2019~23年4-6月調査)

また、【図4】のミドルエイジリスナーのradiko利用率(1か月以内)を確認すると、コロナ前の19年は16.5%でしたが23年は40.4%と約2.5倍に上昇。コロナ禍前よりもradiko聴取が普及していることがわかります。

【図4】ミドルエイジリスナーのradiko1か月以内利用率

 出典:ACR/ex 東京50km圏(2019~23年4-6月調査)

これらのデータから、ラジオをスマートフォンで聴取するミドルエイジリスナーが主流になりつつあることが推察されます。

ミドルエイジリスナーの特徴を探る

ミドルエイジリスナーは、消費や情報収集に積極的!

続いて、ミドルエイジリスナーがどんな人なのか見てみましょう。【図5】の個人年収(平均)・1か月のおこづかい(平均)を確認すると、いずれも一般的なミドルエイジ全体よりもリスナーが上回っていることがわかります。

 
【図5】ミドルエイジリスナーの個人年収と1か月のおこづかい(平均)

出典:ACR/ex 東京50km圏(2023年4-6月調査)

次に、【図6】の買い物や広告、情報などに対する意識を確認してみると、「新製品には興味がある」「自分が気に入れば値段が高くても買う」など、ミドルエイジリスナーは一般的なミドルエイジよりも消費に対して積極的であるようです。

また、「広告は買い物する際に大いに役立っている」「自分向けの広告でなくても、ひとつの情報として受けることがよくある」といった広告への意識に加え、「情報収集に熱心なほう」「情報収集は自ら積極的におこなうほうだ」といった情報意識においても、ミドルエイジリスナーのほうが敏感であることがわかります。

 
【図6】ミドルエイジリスナーの買い物・広告・情報に関する意識

出典:ACR/ex 東京50km圏(2023年4-6月調査)※ミドルエイジ全体とリスナーの差が有意である項目を掲載(有意水準5%)

個人年収やおこづかい、買い物、広告、情報意識のデータから、ミドルエイジリスナーは消費が期待できるターゲットといえそうです。

ミドルエイジリスナーの”ラジオ回帰”と広告効果

ミドルエイジはコロナ禍を経てラジオ番組の良さを再認識している!? 

ミドルエイジリスナーの特性が分かってきたところで、ラジオに対してどのような意識を持っているのかひも解いてみましょう。

【図7】は、「ラジオの特徴・効果やイメージ」について、コロナ前の19年と23年で比較したものです。グラフを見ると、ラジオに対するポジディブな意識が上昇していることがわかり、「ラジオ番組が好き」は約10pt高く、また、「自分が知りたい情報を積極的に探す」「自分が参加できる情報を探す」といったラジオに対する能動的な意識も19年よりも高いことが分かります。

【図7】ミドルエイジラジオリスナーのラジオに対する意識

出典:ACR/ex 東京50km圏(2019~23年 4-6月調査)
※19年リスナーと23年リスナーの差が有意である項目を掲載(有意水準5%)

今のミドルエイジは、若い頃ラジオが常にそばにあった世代ともいえます。

参考URL:NEWSポストセブン「60年代、70年代深夜ラジオ黄金期 勉強部屋での唯一の娯楽だった」https://www.news-postseven.com/archives/20211231_1715820.html?DETAIL

深夜放送を聴きながら勉強をしたり、ハガキの投稿を通じて、パーソナリティそしてリスナー全体と気持ちを共有するなど、ラジオは心の拠り所としても機能していました。

こういった背景もあり元々ラジオとの親和性が高い世代といえますが、加えてコロナ禍によるラジオ接触機会の増加や、スマホデバイスの普及によりいつでもどこでも聴けるようになったこと、さらにはSNS等でラジオ放送の舞台裏など、ラジオ番組をより楽しむことができるような情報入手が可能になるなど、これまで経験してこなかった新たなラジオ体験できること気づき始めいるミドルエイジ増えた結果、スコアが上昇していると考えられます。  

ミドルエイジリスナーへのラジオ広告効果 ―”熱量”の高いラジオリスナーに対する広告効果が高い!?―

最後に、ミドルエイジリスナーに対するラジオ広告効果について分析してみます。

先ほど、ラジオ番組が「好き」と思っているミドルエイジリスナーが特にスコアを伸ばしていることを確認しました。

ラジオが”好き”であるという気持ちは、ラジオコンテンツに対する”熱量”が高いとも言え、コンテンツ聴取の延長で耳にするラジオ広告の影響もより強まる可能性が考えられます。

【図8】は、ラジオ番組が「好き」と思っているミドルエイジリスナーのラジオ広告に対する意識を示したものです。

グラフを見ると、商品・サービス名の記憶から購入までの各項目において、ミドルエイジラジオリスナーよりも、「熱量の高いミドルエイジラジオリスナー」のスコアが高く、態度変容がより見られるという結果が得られました。

「広告を見聞きして実際に商品やサービスを購入したことがある」という「熱量が高いミドルエイジラジオリスナー」は2割と5人に1人は広告接触から購入・利用至っているという興味深い結果も確認されました。

【図8】ミドルエイジリスナーに対する広告効果

出典:ACR/ex 東京50km圏(2023年4-6月調査)

 
ミドルエイジリスナー、とりわけ熱量高くラジオを聴いている人は広告ターゲットとしても優良であることがわかりました。

ラジオが聴取しやすくなっている環境変化を背景に、昔、深夜のラジオ番組聴取やハガキの投稿など、元々高い熱量をもって聞いていたリスナーが、今後さらにラジオに戻ってくる可能性は充分考えられ、広告効果の高いターゲットとして期待できそうです。

最後に

今回は、ミドルエイジにフォーカスし、ラジオ聴取実態やリスナーの特性、広告効果について分析してみました。

【まとめ】   

  • ラジオリスナーの中でも多くのボリュームを占めるミドルエイジでは、近年デジタルデバイス聴取が増加していると推察される。
  • ミドルエイジリスナーは個人年収やお小遣いの金額が高い。買い物・広告・情報意識も高く、消費が期待できるターゲットである。
  • ラジオに対する「熱量の高いミドルエイジリスナー」がコロナ禍を経て上昇。「熱量の高いミドルエイジリスナー」への広告効果も高く、広告ターゲットとしても優良である。

 
今後、ミドルエイジでもデジタルデバイスでのラジオ聴取がメインになると予想され、ラジオはミドルエイジの様々な生活シーンに入り込んでくるでしょう。

色々なシチュエーションで接することができるラジオにより、広告接触のチャンスも増えていくかもしれません。

若い頃にラジオに対して慣れ親しんだミドルエイジリスナーの「ラジオ回帰」も期待でき、リスナーにとって、ラジオは再び”必須アイテム”と化すかもしれません。

高い広告効果も期待できそうなミドルエイジリスナーの動向に注目してみてはいかがでしょう。皆様のマーケティング活動の参考になれば幸いです。

文:山本勇気(株式会社ビデオリサーチ リサーチアナリシスグループ ひと研究所研究員)


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