「トライブ・マーケティング」成功の近道とは?
目次[非表示]
- 1.注目の「トライブマーケティング」
- 2.「トライブマーケティング」とは?
- 2.1.「トライブ」は、新しいものではない
- 2.2.従来からあった「トライブ」とのコミュニケーション
- 2.2.1.「声優ファン」をつかむ文化放送
- 2.2.2.新しくSNSで接点を持てるように
- 2.2.3.「トライブマーケティング」のステップ
- 3.「トライブ」の応援意識を探る
- 3.1.検証|「声優ファン」は、声優コンテンツに反応するのか?
- 3.2.仮説|「声優ファン」は、声優コンテンツを見過ごせない
- 3.3.結果|「声優ファン」エンゲージメント、クリック率ともに好反応
- 3.4.声優コンテンツを見過ごさない「声優ファン」
- 4.「トライブマーケティング」成功の近道は?
注目の「トライブマーケティング」
デジタル技術の革新やスマートフォンの普及を受け、人々の生活も変化しました。
ビジネスシーンも同様で、新たなビジネスモデルやマーケティング手法が台頭しています。
また、人口減少や市場成熟化も加わり、インターネットやSNSを駆使した販促・集客が主流となりました。
ブランドロイヤリティの向上や他社との差別化、顧客獲得に頭を悩ませているという企業さまも多くいらっしゃるではないでしょうか。
この記事では、このような課題をお持ちの方の解決施策として注目の「トライブマーケティング」について、ファンとのコミュニケーションの視点も添えて書きたいと思います。
「トライブマーケティング」とは?
「トライブ」は、新しいものではない
「トライブマーケティング」の「トライブ」は、「特定の興味関心がある集団」のことです。
「トライブマーケティング」は、「特定の興味関心がある集団へのコミュニケーション手法」で、SNSが普及したことで、誕生した新しいマーケティング手法です。
ただ、この「トライブ」は新しく出現したものでは、ありません。
SNSが普及する以前にも、興味関心がある集団は、たとえば「プロ野球」や「宝塚」「アイドル」などのファンクラブ、鉄道や旅行などの趣味サークルなどで形成されてきました。
それでは、なぜ新しいマーケティングなのでしょうか。
それは、インターネットやSNSの普及で、特定の話題や対象に共通の価値観を持つ集団が顕在化され、捕捉できるようになったからです。
今の「トライブ」は、SNSでのつながりが活発で、ノンリアル(顔を知らない同士、非対面状態)でもファン同士の交流ができます。その集団は、SNSの「ハッシュタグ」や「フォロー、フォロワー」で形成されています。
さらに、デジタルツールの発達で、この「トライブ」をみつけ、選ぶことが、「トライブ」に関与していない外部からでも可能になりました。
このように、従来からあった「トライブ」が、SNSの普及で「見える化(可視化)」できるようになり、マーケティングで注目されるようになったのです。
従来からあった「トライブ」とのコミュニケーション
次に、この「トライブ」へのコミュニケーションですが、「特定の興味関心がある集団」へのコミュニケーションも、昔からありました。
例えば、プロ野球は、SNSの出現前から、球団ファンとの接点を持つために、ファンクラブがあり、試合のテレビ中継、ファン感謝イベントを実施しています。
我々、ラジオ局の文化放送では、多くのラジオ番組を制作、放送しています。これらの番組のリスナーに、プレゼントしたり、公開放送イベントに招待しています。リスナーに、番組を好きになってもらい、もっと番組を聴いてもらうために、このようなコミュニケーションをしています。
このようなコミュニケーションは、ファンの反応や情報の広がり方を把握することは難しく、一方通行になりがちでした。
「声優ファン」をつかむ文化放送
文化放送でも、ある「トライブ」にむけて、番組を制作、放送しています。それは「声優ファン」です。
文化放送では、声優が出演するラジオ番組を、地上波ラジオとインターネットラジオを合わせて、毎週120番組以上制作しています。
これら声優番組の放送時間を金土日の夜に集中させ、その時間帯に「A&G(アニメ&ゲーム)ゾーン」と呼んでいます。「A&Gゾーン」とニックネームをつけたのは「文化放送=声優ラジオ番組」というイメージを、「声優ファン」の記憶に残るようにするためです。
また、「声優ファン」に、もっと番組を聴いてもらうためコミュニケーションも活発です。声優と会える番組公開イベント実施、コミケに出展や番組グッズ制作、販売したり、メルマガで情報発信しています。
▼「声優ファンがわかる」こちらの記事をお読みください▼
新しくSNSで接点を持てるように
このように、「プロ野球ファン」や「声優ファン」など「トライブ」とのコミュニケーションは、従来から存在しますが、なぜ「トライブマーケティング」が注目されるのでしょうか。
それは、ファンとの接点に新しくSNSが加わったからです。
「トライブ」とSNSでの接点が確立することで、「トライブ」のコミュニケーションに大きな変化が起きました。それは「トライブ」自らがSNSで情報を発信、拡散してくれるようになったことです。「トライブ」が情報の発信元となったのです。
たとえば、「推し活」でSNSで発言が活発になることがあります。これは、ファンが好きな対象を応援するため、自らSNSで発信して、「トライブ」の内と外で、対象の情報が増幅していく現状です。
この「トライブ」は、ファンである対象を応援するため、自ら情報発信することに積極的な集団なのです。
このように、「トライブマーケティング」は、SNSなどで顕在化した「トライブ」をターゲットにし、その「トライブ」に適した情報を発信して、「トライブ」自らが発信、情報を拡散させていく手法が新しい点です。
「トライブマーケティング」のステップ
「トライブマーケティング」について説明しましたが、その実施には、大きく次のようなステップがあります。
「トライブ(特定の興味関心の集団)」をセグメント
- 「トライブ」に「企業メッセージ(コンテンツ)」を発信
- 情報を受け取った「トライブ」が自らその情報を発信、拡散
「トライブ」の応援意識を探る
ここまで「トライブマーケティング」では、「トライブ」が自ら情報発信する応援意識が必要です。それはどのようなものでしょうか。今回、多様な「トライブ」の中から、「声優ファン」の応援意識を探ってみました。
検証|「声優ファン」は、声優コンテンツに反応するのか?
「声優ファン」の熱量ですが、最近ではニュースなどで見聞きされるようになりました。「(声優のことは知らないけど)声優ファンは、熱い」というイメージを、なんとなくお持ちの方も多いと思います。
そのファンの声優を応援する熱量を知るため、
- 声優ファンをセグメントして「トライブ」を形成
- 声優のコンテンツを企画、選定
- 声優コンテンツを「トライブ」に情報発信
- 情報発信後、「トライブ」の反応を計測
という手順で、ファンの熱量を探る検証をしてみました。
ステップ①「トライブ」形成|ラジコのユーザー情報でセグメント
これまでも、「声優ファン」は、番組単体でファンとして認識できました(例:番組宛てのメール投稿者、番組Twitterフォロワーなど)。しかし、たとえば「女性声優が出演する複数のラジオ番組リスナー」というセグメントはできませんでした。
しかし、今は、ラジコのユーザーデータで、番組接触者をセグメントできます。
ラジコは、デジタルサービスなので、各番組の聴いているユーザー情報(識別子)を取得できます。この識別子で、文化放送の各声優番組を聴いているユーザーを特定します(※)。※この場合の、ユーザー情報の利用は識別子のみ
今回は、このラジコのユーザー情報を利用して、声優番組リスナーを「トライブ」としてセグメントしました。
ステップ②声優コンテンツ|「チョコレート菓子」をPR!人気女性声優の音声CM
明治は、チョコレート菓子「ガルボ」のプロモーションで、人気女性声優の花澤香菜がパーソナリティーを務めるラジオ番組「花澤香菜のひとりでできるかな?」を提供しています。
文化放送ラジオ番組「明治presents 花澤香菜のひとりでできるかな?」とは?
文化放送の地上波ラジオ、インターネットラジオチャンネル『超!A&G+』で放送している声優・花澤香菜のトーク番組。番組では、プライベートから仕事のことまで日々の出来事をひとりしゃべりで展開している。2022年4月より、地上波ラジオでも放送開始。
番組Twitterアカウント:@hitokana_qr
このプロモーションの一環で、花澤香菜が声で出演する「ガルボ」の音声CMを制作、番組のTwitterアカウントでツイートしています。花澤香菜のラジオ番組にリスナーへ商品の情報を発信することが目的です。
ステップ③声優ファンに、声優コンテンツのツイートを広告配信
この音声CMのツイートを「声優ファン」に広告配信のターゲットは2つ設定しました。
- 声優ラジオ番組リスナー(=花澤香菜の番組除く、文化放送の声優番組接触者)
- ノンリスナー(上記をリスナーを除く、Twitterユーザーから抽出)
です。
花澤香菜の番組接触者は、コアファンで好反応が予想されるためターゲットから除きました。
仮説|「声優ファン」は、声優コンテンツを見過ごせない
この2つのターゲットに、声優コンテンツのツイートをTwitter広告配信し、その反応を計測しました(図1)。
図1:検証の手順イメージ
結果|「声優ファン」エンゲージメント、クリック率ともに好反応
結果、「声優番組リスナー」は「ノンリスナー」と比べて、エンゲージメント率が13倍、クリック率は1.8倍になりました(図2)。
図2:声優番組リスナー、ノンリスナー 広告配信の反応比較
なぜ「声優ファン」の高い反応を得られたのでしょうか。
- 「声優ファン」に違和感を与えない、声優コンテンツのツイートだったから。
- (普段、花澤香菜の番組は聴かないが)花澤香菜を知っている「声優ファン」が好意をもったから。
- 「声優ファン」同士の親和性。
が推察できます。
また、今回の検証では触れませんでしたが、声優コンテンツの内容も、この反応の良さに影響を与えているかもしれません。
声優コンテンツを見過ごさない「声優ファン」
この結果から、文化放送の番組を聴いている「声優ファン」は、同じ質を持ち、親和性があることが推測できます。
また、この「トライブ」は、あふれる情報の中から、「自分に関連がある情報」を選別し、そのような情報に、積極的に反応する性質がみえてきました。
そして「声優ファン」が違和感を持たない、ファン文脈に沿った「コンテンツ」を発信することで、コミュニケーションの活性化につながることもわかりました。
▼【事例記事】人気声優がシャンプー、即席ラーメンでプロモーション▼
「トライブマーケティング」成功の近道は?
今回は、トライブマーケティングについて、「声優ファン」とのコミュニケーションの視点を加えて、探ってみました。
「声優ファン」の反応は、仮説通りの結果でしたが、ファンの応援意識がコミュニケーションを活性化させることがわかりました。
「トライブマーケティング」で成果するためには、「トライブ」を知り尽くして、「トライブ」が自ら情報発信、拡散させたくなるコンテンツ(メッセージ)を企画、制作することが重要です。
ファンの応援する心理を見間違うと、ファンの応援意識は下がり、情報発信されず、失敗するからです。
「トライブマーケティング」の成功の近道は、ターゲットの「トライブ」を知るチームが「トライブ」とのコミュニケーションを企画、設計することです。
文化放送は番組制作を通じて、「声優ファン」を持ち、「声優コンテンツ」を制作でき、SNSやラジオ番組など様々な接点で、ファンとコミュニケーションをしています。普段からファンとコミュニケーションをとっているので、ファンが喜ぶコンテンツを作るのが得意です。
ファンビジネスやブランディング向上への課題を、文化放送の「声優ファン」を活用したコミュニケーションが解決できるかもしれません。
ご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。
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