Z世代のトレンド~ラジオメディア聴取実態調査とラジオのマーケティング活用~
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注目される「Z世代の音声メディア接触」
昨今、podcastなどの音声メディアが注目を浴びており、何かをしながらでも情報を収集したり楽しめたりすることで「音の再価値化」が進んでいるようです。
コロナ禍でおうち時間が増え、音声メディア接触が増えたことも要因の一つでしょう。「音の再価値化」はオールドメディアであるラジオも例外ではないようです。
ラジオといえば比較的年齢層の高い人が聴いているイメージがありますが、本当にそうでしょうか。
今回は音声メディアの中でもラジオに焦点を当て、若者のラジオ聴取事情、そしてラジオのマーケティング活用の可能性について、ビデオリサーチ社のマーケティングデータベース「ACR/ex」を用いて分析してみました。
「Z世代はラジオを聴かない」は本当か?
図1は、個人全体(男女12-69歳)とZ世代(男女12-25歳)がラジオを週に1日以上聴いている人の割合です。過去5年間の推移を見ると、個人全体ではあまり聴取率に変化が見られないのに対して、Z世代では聴取割合が上昇傾向にあることが分かります。
とりわけZ世代女性でラジオ聴取率が高い傾向が見られ、2022年では週1以上接触者は2割を超えています。
図1:個人全体(男女12-69歳)とZ世代のラジオ聴取率(週に1日以上)
(ACR/ex 2018年~2022年4-6月 東京50km圏)
伸び続けているZ世代の「ラジコ」利用率
ラジオは今や形を変え、radikoでの聴取も当たり前となってきました。図2は、radiko利用経験者の割合を示したものです。Z世代は個人全体同様に利用割合が上昇し、男女別で見ると、特に女性で利用率が伸びており、2022年では個人全体のradiko利用率44.3%とほぼ同じ割合(42.7%)にまで迫っていることが分かります。
図2:個人全体(男女12-69歳)とZ世代のradiko利用経験率
(ACR/ex 2018年~2022年4-6月 東京50km圏)
コロナ禍が収束しつつある今でもラジオ接触が伸び続けていることを考えれば、若者の間で音声を聞くことの心地よさに気付き始めている可能性がうかがえるでしょう。
Z世代のラジオメディア意識を調査
Z世代はラジオにどのように接しているのでしょうか。ここからはラジオ週1以上接触する層を「ラジオコア層」と定義し、Z世代のラジオ意識を探ってみます。
Z世代のラジオ接触は、21時以降
図3は時間帯別でラジオ接触割合を示したグラフです。個人全体のラジオコア層(同じく週1以上接触者)では朝から夕方にかけて聴取率が高くなっていますが、夜以降は聴取率が下がっています。
一方、Z世代ラジオコア層は夜のほうで聴取率が高く、21時以降は個人全体ラジオコア層の割合よりも高くなっています。
年代別で見ると、Z世代ラジオコア層にあてはまる女性は21:00~24:00の時間帯で40%近くもラジオを聴いていることが分かります。Z世代にとってラジオは夜に楽しむメディアであることが見えてきます。
図3:時間帯別ラジオ聴取率(ACR/ex 2022年4-6月 東京50km圏)
ラジオコア層がよく聴く番組|男性は「お笑い出演番組」、女性は「歌手出演番組」
では、Z世代ラジオコア層はどのような番組を聴いているのでしょうか。図4を見ると、個人全体ラジオコア層では「アナウンサー・DJがパーソナリティの番組」をよく聴いているのに対し、Z世代ラジオコア層は、歌手や俳優、お笑いタレントなど、タレントや芸能人が出演する番組をよく聴いていることが分かります。
男性は「トーク番組」や「お笑いタレントがパーソナリティの番組」、女性では「歌手がパーソナリティの番組」をとりわけ好んでいるようです。
図4:Z世代ラジオコア層がよく聴くラジオ番組(ACR/ex 2022年4-6月 東京50km圏)
「タレント・芸能人」への感度が高い傾向
この結果は、Z世代ラジオコア層が「タレント・芸能人」への感度が高いからなのかもしれません。図5は、エンタメ周りの情報で積極的に収集すると答えた割合を示しています。
Z世代ラジオコア層は男女ともにタレント・芸能人を積極的に収集する人は、一般Z世代よりも2倍以上いることが分かります。
Z世代ラジオコア層は、タレントや芸能人がパーソナリティかどうかを重要視し、アナウンサーやDJのような「プロ」よりも「アマ」が作り出すラジオコンテンツに惹かれているようです。
図5:積極的に収集するエンタメ周りの情報(ACR/ex 2022年4-6月 東京50km圏)
「好きになったラジオ番組から離れない」Z世代ラジオコア層
このようにタレントや芸能人起点でラジオを聴取している可能性があるZ世代ですが、好きな番組をある程度決めて聴いているのでしょうか。それとも色々な番組を聴く傾向にあるのでしょうか。
図6は、ラジオ・その他マス媒体のコンテンツ対するロイヤリティを示したものです。Z世代ラジオコア層は、男性は約7割、女性は約8割と、聴くラジオ局や番組が決まっているZ世代が多いようです。
テレビや雑誌についても同じ傾向が見られ、一般Z世代と比較すると、楽しみにしているテレビ番組やよく読む雑誌が決まっているZ世代ラジオコア層が多いことが分かります。
この結果から、Z世代ラジオコア層は、ラジオを含めた「メディア・コンテンツ」に対するロイヤリティが高く、ひとたびコンテンツを好きになると離れない傾向にあることが推察されます。
図6:Z世代のメディア・コンテンツに対するロイヤリティ(ACR/ex 2022年4-6月 東京50km圏)
お気に入りのラジオコンテンツがあるZ世代には、ラジオ広告の効果が高い!?
特定のラジオコンテンツに対してロイヤリティが高いZ世代に対して広告を当てると、どのような効果が見られるのでしょうか。図7は、購買ファネルごとに態度変容のリフトを分析したものです。
Z世代で週1以上ラジオ接触者、かつ聴くラジオ局や番組が決まっている人は、上位・下位ファネルともに態度変容がより強化されるという興味深い結果が得られました。
「聴いていて楽しい」という気持ちの最中に広告に接触すると、広告に対する注意も増し、好意も上がっていくためではないかと推察されます。
ラジオコンテンツに対してロイヤリティのあるZ世代に対して広告を当てていくことで、効率のよいマーケティングが可能になるでしょう。
図7:各ファネルに対するZ世代の態度変容(ACR/ex 2022年4-6月 東京50km圏)
<まとめ>「ラジオ」ファンのZ世代には、「ラジオ広告」のファン化も期待
今回は、Z世代のラジオ聴取実態とマーケティング活用について探ってみました。Z世代のラジオ聴取は近年上昇傾向にあり、週1以上ラジオ接触するZ世代は深夜にもラジオ聴取&タレント・芸能人起点でラジオコンテンツによく接触していることが分かりました。
また、ラジオに限らず、メディア・コンテンツに対するロイヤリティが強い傾向が見られ、聴取するラジオ局や番組が決まっている人に対する広告効果が高いことも分かりました。
「コンテンツ」に対する”ファン化”傾向が強いZ世代は、好きになったラジオコンテンツ内で接触する広告に対しても”ファン化”が見込めるかもしれません。
昨今、再び注目を浴びでいるラジオメディアで広告コミュニケーションを行うことで、Z世代の心を動かしてみてはいかがでしょうか。みなさまのコミュニケーション戦略の参考になれば幸いです。
文:山本勇気(株式会社ビデオリサーチ リサーチアナリシスグループ ひと研究所研究員)
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