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デジタル動画広告(YouTube)の1インプレッションの価値を向上する方法 ~ラジオCMとの比較からみた「態度変容力」~


目次[非表示]

  1. 1.はじめに ~注目!メディア横断で広告を最適化~
  2. 2.広告メディアとしての価値を測る「態度変容力」
  3. 3.「1インプレッション」で期待できる態度変容を可視化する
  4. 4.態度変容を比較|デジタル動画広告(YouTube)とラジオCM
  5. 5.デジタルとラジオの相乗効果は?
  6. 6.まとめ
    1. 6.1.デジタル動画広告の広告効果を上昇させるラジオCM

はじめに ~注目!メディア横断で広告を最適化~

昨今、メディアの多様化に伴って様々なメディア・コンテンツで広告が展開されています。訴求を行うメディアやコンテンツを選ぶことは以前に比べて難しくなってきたと言えます。

以前はリーチ指標で、よりたくさんの人に届けられるメディアが好まれる傾向がありましたが、昨今は多様化する生活者に合わせて訴求も変化させることで効果を生みやすくする最適化に注目が集まっています。

最適化はデジタルメディアの得意領域でしたが、雑誌や音声メディアなどがデジタル進出する中で、「コンテンツメディア」としてメディア横断で展開されています。

今回はメディアの広告価値をリーチパワーとは異なる視点から、コンテンツメディアの1つであるラジオとデジタル動画の比較を通して考えてみたいと思います。



広告メディアとしての価値を測る「態度変容力」

みなさんも、広告を出稿する場合はその効果が高いメディア・コンテンツに出稿したいとお考えでしょう。では、その「広告効果」とはいったい何を指すのでしょうか?

リーチを思い浮かべたかたもいらっしゃると思いますが、実はリーチは広告効果を構成する一要因にすぎません。


図表1:広告効果を構成する2つの要素イメージ


<図表1の用語>「認知力」そのメディアが持つ広告を認知させるポテンシャル。「態度変容力」広告を見たときに起きる態度変容効果。


図表1は、広告効果のとらえ方を表したものです。広告効果は、認知力と態度変容力の掛け合わせで成り立っていると筆者は考えています。広告への認知に影響するものが「リーチ」ですが、これだけでなく広告に接して「態度変容」が起こることで、初めて市場への影響がもたらされるわけです。

ここで1つ疑問が生まれます。動画や音声、サイネージなど形態は様々でもリーチの観点では1回接触すると1インプレッションとして等価ですが、態度変容はどうでしょうか?


「1インプレッション」で期待できる態度変容を可視化する

1回の接触(1インプレッション)で得られる態度変容は、メディアが異なると違うのではないかと感じられた方も多いのではないでしょうか?態度変容効果は、もちろん個別の広告キャンペーンによっても変わってきます。各広告キャンペーンでブランドリフト調査行って明らかにすることもありますが、ここではより一般論として、1インプレッションで期待できる態度変容を考えてみたいと思います。

ビデオリサーチの生活者データベースACR/ex(エーシーアール・エクス)を使って、生活者の各メディアの広告への印象の差から確認したいと思います。

今回は、ラジオCMに加えて比較対象としてデジタル動画広告を取り上げました。オンライン上の動画の接点はコロナ禍の影響もあり増加しており、デジタル動画広告をコミュニケーションの手段として活用される方も多いと思います。


態度変容を比較|デジタル動画広告(YouTube)とラジオCM

昨今活用が進むデジタル動画広告(YouTube動画広告)と比較して、ラジオCMはどのような態度変容効果があるのでしょうか?

ここでは態度変容を『広告そのものの印象』で捉えました。広告の印象として、

  • 「商品名が印象に残る」
  • 「企業や商品に親しみがわく」
  • 「広告の内容をインターネットで調べる」
  • 「広告を見聞きして、商品やサービスを欲しくなったり、利用したくなることがある」
  • 「広告を見聞きして、実際に商品やサービスを購入(利用)したことがある」

の5段階の購買ファネルで確認しました。各スコアは当該媒体の利用者のスコアを用いることで、リーチした際の態度変容を表現できるよう分析しました。その結果が図表2です。


図表2:各広告の購買ファネル別態度変容(%)



これをみると、「印象に残る」「親しみがわく」というファネル上位でラジオCMがより作用する一方、ファネル下位になるほどデジタル動画がより作用するという結果になっています。

デジタル広告はターゲットを絞り込んだKGIに近い態度変容を起こしやすい出稿方法が特徴のため、こういった結果がみられるわけです。

逆に言えば、商品・サービスのインパクトや親近感醸成という点では、ラジオCMも加えることで高めることができ、よりファネル下位の意向や購入利用を促進することができるとも言えます。単体のメディアで活用するだけでなく、組みわせることで更なる効果が期待できそうです。


デジタルとラジオの相乗効果は?

では、デジタル動画広告とラジオCMを組み合わせた場合、どのような効果が期待できるのでしょうか?

昨今では、単メディアのみを活用したコミュニケーションは少なくなり、多くの広告コミュニケーション案件では複数のメディアを組み合わせたプランニングが主流になっています。

多くの実事例や広告領域の学術研究では、複数のメディアを組み合わせて出稿した場合、各メディアの広告に重複して接触するほうが、効果が高まることが示されています(例えば猪狩・河原,2014)。

ここでは、デジタル動画広告とラジオCMの両方にうまく接触させることができた場合、デジタル動画広告単体の場合に比べてどの程度態度変容をリフトさせることができるのかを、図表2の5段階の購買ファネルで確認しました。

デジタル動画広告とラジオCMの重複態度変容は、各メディアの重複接触者のうち、各購買ファネルでデジタル動画広告かラジオCMいずれかで該当した人の割合で算出しました(図表3)。すると興味深い結果が得られました。


図表3:デジタル動画広告と、ラジオを加えた場合の購買ファネル別態度変容(%)


ラジオCMに特徴的な態度変容であったファネル上位のインパクトや親近感醸成が2倍以上リフトするだけでなく、意向も1.9倍とインパクトや親近感醸成と同程度リフトが期待でき、購入利用も約1.2倍になるという結果でした。

これは、ラジオCMを組み合わせることによってファネル上位の態度変容が強化され、結果的にデジタル動画広告で特徴的な領域であるファネル下位の効果も高めるためと考えることができます。

この傾向は、上述の事例や広告領域の学術研究とも一致する結果です。


  「好感度」接触者が非接触者の6倍に!ブランドリフト調査にみる音声広告の効果 音声広告ならば嫌がられない|興味深い調査結果があります。スポティファンジャパンが楽天インサイトとともに、 2021年12月に行った「ブランドリフト調査(ろうきん)」です。月に1回以上Spotifyを利用している全国の18~49歳の男女400人を対象に、「ろうきん(中央労働金庫)」の音声広告の接触者と非接触者で違いを計る調査でした。 文化放送メディアナビ



まとめ

今回は、広告の態度変容の観点で1インプレッションの価値の違いを考えてみました。

ラジオCMとデジタル動画広告との比較で確認しましたが、その役割の違いが明らかになりました。1インプレッションは常に等価ではなく、広告目的によって変わると言えるでしょう。目的を意識したメディア選定が重要になるわけです。




デジタル動画広告の広告効果を上昇させるラジオCM

ラジオCMの役割としてインパクトや親近感醸成への期待も大きいことは明らかですが、筆者は特に「他メディアの広告効果をリフトさせる」という点に非常に興味を持ちました。

みなさんも、デジタル動画広告をはじめ様々なメディアをコミュニケーション手段として用いられていると思います。

それらの効果をさらに向上させる視点でラジオCMを検討すると、これまでとは別の新たな活用方法が見えてくるかもしれません。

ぜひみなさまのコミュニケーション戦略のご参考にしていただければ幸いです。

文:吉田正寛(株式会社ビデオリサーチ フェロー)


<参考文献>猪狩良介、河原達也(2014)「クロスメディア効果を考慮した広告キャンペーンの分析 : 広告認知と態度変容効果のモデル化」 『日経広告研究所報』 48(2), 24-30,  




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