【声優業界トレンド】「第16回声優アワード」速報&解説
「声優アワード」とは?
ここ数年アニメ・ゲーム業界では大人ターゲットのコンテンツが大幅に伸び、これにともなうグッズ購入やイベント参加や配信サービスの利用などで、アニメ産業市場が大きく伸びています。
これにともない、声優ブームも到来。声優は歌手活動からバラエティのMC、俳優業などいわゆる“顔出し”の仕事が増え、CMキャラクターにも多数起用されるようになりました。
その人気の声優業界のトレンドを知るひとつの指標となっているのが、「声優アワード」です。
「声優アワード」とは、その年度に「最も印象に残る」声優や作品を対象に、その業績を称える、本格的な「声優」を対象とするアワードで、日本音声製作者連盟とKADOKAWA、文化放送、小学館、小学館集英社プロダクションがアニメ業界各社と協力し、創設された賞です。
「声優アワード」受賞者、受賞作品
去る3月5日、「第16回 声優アワード」の受賞者・受賞作品が発表となりました。
主演男優賞は、小野賢章さん。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のハサウェイ・ノア役では、二面性のある複雑なキャラクターを丁寧に表現。センシティブかつ力強い演技で作品を牽引しました。このほか最近では、『2.43 清陰高校男子バレー部』、『バック・アロウ』にも出演しています。
主演女優賞は、緒方恵美さん。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の主人公・碇シンジ(いかり・しんじ)役をテレビシリーズから26年に渡り担当。14歳の少年の心情の変化を繊細に表現する演技力は、世界中のファンを惹きつけています。このほか最近では、『アクダマドライブ』、『平穏世代の韋駄天達』などにも出演しました。
受賞者からみる「現在の声優業界」
今回の各賞受賞者から現在のアニメ・ゲーム・声優業界を考察すると2つの点が挙げられます。
一つは、昔のアニメのリバイバルの増加です。令和、平成、昭和、いずれの世代からも人気を得たヒット作品が増えてきています。『エヴァンゲリオン』と『ガンダム』は、懐かしいだけでなく、若年層も新たに取り込む作品としては“二大アニメ”といえます。 『エヴァンゲリオン』シリーズの完結編『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、2021年3月に公開され興行収入102億円超を記録しました。一方の『ガンダム』は、2021年6月に映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が公開され、興行収入21億円、観客動員100万人以上の大ヒットを記録しました。
令和、平成、昭和…と世代の垣根を超えたリバイバル作品は、2022年に入っても引き続き注目です。今年は秋に劇場版『SLAM DUNK』の公開が予定されています。また連載から30周年を迎える『美少女戦士セーラームーン』の30周年プロジェクトもスタートするなど、話題満載です。これに伴い、出演声優も、大御所から若手まで垣根を超えた活躍が目立ちます。
一方で、「多くの主要キャラクターが活躍するため、主役・主演を特定することが難しい」作品が増える傾向も目立ちます。『ラブライブ!』、『おそ松さん』、『刀剣乱舞』…そして、今回の声優アワードで作品賞を受賞した『ウマ娘 プリティーダービー』もその一つです。「主演男優賞」「主演女優賞」を選ぶのも今後さらに難しくなる可能性があります。その分、多くの声優に活躍のチャンスが与えられるということにもなります。
「男優賞」「女優賞」ということでは、「主演女優賞」を獲得した緒方恵美さんの受賞コメントも話題となっています。受賞を喜ぶ一方で、「男優とか女優とかじゃなく、顔出しの業界(俳優)の皆様よりも、ジェンダーフリーを発信できるのは、むしろ声優じゃないかと思います。次回からは、男とか女とか、どうでもいいので二人ずつとか、そんな感じになったなら、よりいろいろなことになるんじゃないでしょうか」と、声優界からジェンダーフリーを進めていくべきと提言しました。
コロナ禍で変化する業界事情
最後に、声優がテレビ番組に出る機会がぐっと増えたことについて。これは2020年に『鬼滅の刃』が大ヒットしたことが挙げられますが、もう一つ、長引く新型コロナウィルスも影響しているといえるかもしれません。以前は、出演者が一同に会して収録していたため、作品が決まるとスケジュールを1週間、1カ月単位で大きく取られてしまっていましたが、現在はコロナ感染予防の観点から、音声をバラ撮りすることが増え、これにより、声優一人ひとりのスケジュールに余裕が出て活動の時間も場所も広がってきたことも理由の一つと考えられます。
今回の声優アワードで「インフルエンサー賞」を受賞した関智一さんは、お笑いコンビ「ぺこぱ」と共にMCを務めるバラエティ番組「声優パーク建設計画 VR部」(テレビ朝日系)などで声優業界の認知を広げたことが受賞理由となっています。
関さんといえば、以前から声優業界を盛り上げる活動を積極的にされてきた方ですが、あの明るい兄貴分気質は、タレントとしても魅力的な存在です。時間に余裕ができた今だからこそのテレビ出演なのかもしれません。
しばらく「withコロナ」生活が続きそうな2022年も、声優人気が続くことは間違いなさそうです。
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